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今夜は無礼講(ギャグ)

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に発表する 2018-10-14 19:54:06 携帯電話から | すべてのコメントを表示 |閲読モード
怪談の宴
ゲーム内の名前: hubtass
ゲーム内のID: 7240369
サーバー: アジア
 10月31日。ハロウィン。
 元々は魔除の為の祭りだったそれは、現在、お菓子目当ての子供や仮装で盛り上がる若者達の為のものとなってきている。
 その風潮は、日々おぞましいゲームで悲鳴の上がる荘園でも存在した。
「おかしいわ」
 フィオナは漂っている甘ったるい匂いにため息をつき、扉の鍵を宙に浮かばせながら言った。
「何が?」
 赤ずきんの衣装を身にまとったトレイシーがコントローラで機械人形を操作しながら尋ねると、フィオナは扉の鍵を机の上に置く。
 8人が座れる椅子と長机の用意された部屋は、まさしくゲームの始まる直前に各々が待機する場所だった。しかし今は全員リラックスしている。本日は無礼講、いつもはサバイバーを脅かす存在でしかないハンターも娘と戯れたり鼻歌を歌ったりくるくると踊ったり……要は、パーティーである。
「そもそもハロウィンっていうのはケルト人の……」
「フィオナ、そのへんにしておこうぜ。誰もそんな話聞かねえから」
 ウィリアムが言うと、フィオナは眉間にシワを寄せる。しかし神の導きを信じない者に何を言っても仕方が無いと悟った彼女は、またフワフワと扉の鍵を浮かせ始めた。
「それ、どういう仕組みなんだ?」
「神のご加護よ」
 そう言われても納得しないジョーカーは、まじまじと扉の鍵を見つめている。フィオナはそんな視線に嫌気がさし、扉の鍵で反対方向にワープしようとした。
 その時だった。
「きゃー!」
 エマの叫び声が部屋中に響き渡る。部屋にいた者がばっとそちらを向くと、そこには……
「ぴ、ピアソン!?」
 倒れている、泥棒の姿があった。

「死亡推定時刻は……」
「死んでないから」
 エミリーに治療されながら、ピアソンはバーテンダーの衣装のフレディに突っ込む。頭を打って気絶していただけのようだ。
「ひどいわ……誰がこんなことを……」
「そもそも、エマが叫ぶまでなんで誰も気づかなかったんだ……?」
 メイド服を着た仲間想いのマーサは震えるが、感染ナワーブはシュールな光景に苦笑いする。
 いくらピアソンが端の、ジャック・オ・ランタンがゴロゴロ転がっている方に倒れていたとはいえ、普通は誰か気づくはずである。それが、誰も気付かなかったのだ。
「すみません……転がっているのがまさか人だとは思っていなくて……」
 ヘレナは申し訳なさそうに言う。ヘレナは杖をつくことで何かカボチャではない物が転がっているというのは把握していたが、まさかそれがピアソンだとは思わなかったらしい。
「一体何が起きたの、ピアソン」
 エミリーが治療を終え尋ねても、ピアソンははっきりとした態度をとらない。
「それが、俺にもよく分からなくて……」
「誰かに殴られたなら、犯人はハンターじゃないかなあ」
 ジャックが鼻歌混じりに言うと、皆が「お前がそれを言うか?」というような視線を与えた。ジャックだってハンターだ。
「うちはそないな事しいひんよ」
 花嫁衣装の美智子が扇子で顔を扇ぎながら言うのにレオも頷く。そもそも美智子の攻撃方法は頭を殴るのに適さない。それはジャックにも言えることだろう。
「誰がピアソンをあんな目に……」
 カートが唸る。皆が犯人について考え込む中、何人かは違う行動を取っていた。
 カヴィンは全くピアソンの事件に興味が無いようで、どうしたら震えるエマやマーサを慰めるか考えていた。
 セルヴェはトレイシーに頼まれていたマジックの準備をしている。
 そしてフィオナは、どうしても自分と目を合わせようとしないウィラをじーっと見つめていた。
「ウィラ」
「今日もいい天気ね」
「今は夜だから全然天気は分からないわ、ウィラ、こっちを見なさい」
「あ、ヴィオレッタがショーの準備をしているわ。ほら、見て」
「ヴィオレッタは今どう見てもウィリアムを繭にしてるわ」
「助けてあげないと」
「大丈夫よ、ハスターが止めに入ったから」
「笵無咎、素敵な傘ね、見せてちょうだい」
「そっちは謝必安よ。ウィラ、何で目を合わせないのかしら」
 段々と周りの者も様子のおかしいウィラに気が付いてきたようで、ウィラに視線が集まり始める。
「ウィラさん、どうして目を合わせてくれないの?」
 エマが笑顔で尋ねる。ウィラはバツの悪そうな顔をし、立ち上がろうとした。しかし、椅子が何かに引っかかり立ち上がる事は叶わない。
「話、聞かせてくれないかな」
 引っかかったのはトレイシーの操る人形だった。人形に意思はなく、ただそこでキョロキョロと辺りを見回している。
 観念したのか、ウィラはため息をついて話し始めた。
「私だって知らないわよ、ピアソンの事なんて。でもね……この部屋、良い香りがしない?」
 その言葉を聞いた者は、皆匂いを嗅ぎ始める。フィオナはウィラの言っている意味が分かった。
「良い香りかは知らないけれど、甘い香りがするわね」
「それ、私の香水の香りよ」
 言われて、大抵の者はあー、と呟いた。ウィラでなくとも、箱から香水を取り出した事のある者には馴染みのある匂いなのだ。
「私の持っている香水は忘却の香水。もしかしたら、ピアソンすら覚えていないのには、私の香水が関係しているんじゃないかと思って」
「お前の香水のせいで皆何があったか忘れたって事か?」
 ウィリアムの言葉にウィラは頷く。少し拗ねたようなウィラに、カヴィンが近づいた。
「まあ気にする事はないさ。結局皆忘れたんじゃ、犯人探しも意味は無い。どうせ犯人だってその事を忘れているだろうし」
 そして肩に手を回そうとしたカヴィンの手を、ウィラはばしっと叩いた。
 せっかくのパーティーなんだしこの話はここらでやめよう、というフレディの言葉で、犯人探しの流れは止まる。
 しかし、フィオナはどこか納得がいっていなかった。
「いつも、近くで香水を使われても記憶なんて失わないのだけれど……」
 その呟きは、喧騒に紛れて、消えて行く。

 ハスターは触手を生やしてサバイバーと戯れながら、1人思い出していた。
 ハロウィンパーティーの準備中、床の掃除をしていたピアソンの近くを、ジャック・オ・ランタンを運ぶウィラが通った。
 そこでヘレナの杖に引っかかって転び……大きなカボチャが、ピアソンの頭に直撃。
 ウィラはピアソンを叩いて起こそうとしたが……気絶していて、起きる事は無かった。それを見た周りの者は、「あーやっちまったな」という目でウィラを見る。
 そこでウィラが取った行動は……
『ちょ、私は知らないわよ!こんな所にいたピアソンが悪いんだから!』
と言いながら香水を大量に振りまくというものだった。記憶を失った彼女には覚えが無かったらしいが、香水は確かにウィラが周りの者の記憶を奪う為に使ったのだ。
 ハスターはウィラを凝視する。彼女の忘却の香水は、都合よくピアソンが気絶した記憶を周りから奪った。しかし、ハスターにはそのような香水など効かなかった。何故ならハスターは黄衣の王……旧支配者であり、深淵の住人だから。
 1人記憶を失わなかったハスターは、ウィラの罪を告発するでもなく……ただ、何も知らない周りの者達を笑っていた。

 夜も更け、そろそろパーティーもお開きかと思われた時、予想だにしなかった訪問者が部屋に現れた。
「トリックオアトリート!」
 そこにいたのは、黒と赤を基調とした衣装を身にまとった少女と、悪魔のような姿をした青年だった。
「はい飴どうぞ、素敵な格好ね」
「ありがとうマーサ。マーサこそ素敵なメイドさん」
 優雅にお辞儀をされたマーサは顔を赤らめた。「こ、これは仮装で……」とブツブツ呟いている。
「いやあ美しい踊り子だ、一緒にダンスでも……」
「カヴィンもお菓子ちょうだい」
 カヴィンの誘いをさらっとかわし、くるくると舞う少女。その隣で苦笑いをしていた青年は、咳払いをするとカメラを構えた。
「記念撮影したいんだけど、新入りの彼女も一緒で構わないかい?」
「別にいいぜ」
「ああベイン、鹿の仮装似合ってるね」
「ベインはもともと鹿どすえ」
 あはは、と笑って皆は集まりだす。
 いつも残酷な世界に生きるサバイバー達。今日ばかりは、悪霊をはらう祭りの効果で皆が楽しく過ごせますように。そんな、ほのかな願いの賜物。それが、撮影師の撮った写真だった。

「……ちょっとハスター!触手生やしすぎよ!邪魔なんだけど!チェイスできない!昨日香水使いすぎちゃってもう無いしー!あーもう荘園から脱出したい!」
 もちろん、翌日からゲームは再開された。
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