選択してください 携帯版へ | 引き続きパソコン版にアクセス
 新規登録
チェック: 9221|返信: 0

厄災の始まり

[リンクをコピー]

2

主题

2

帖子

12

积分

新手上路

Rank: 1

积分
12
に発表する 2018-10-16 21:05:08 携帯電話から | すべてのコメントを表示 |閲読モード
怪談の宴
ゲーム内の名前: Uronta。
ゲーム内のID: 13038408
サーバー: アジア
私は《いなくなった娘を探して欲しい》という依頼を受けてここ

に来た。

何故かって?  この荘園が依頼主の娘の、最後の目撃情報のあっ

た場所だからだよ。

特に理由無く、こんな物騒な場所に足を運ぶ物好きなんてそうい

るもんじゃない。

私のような過去を置き去りにして探偵業を始めた、落ちこぼれを

除いて──。



建物の正門に辿り着き上空を見上げるも、霧が濃くその全容は見

えない。

「これを一人で押し開けるのは骨が折れるな……本当に」

自分の身長を遥かに超える鉄の扉を見つめ一歩前に出た──その

瞬間。扉の周辺から複雑な機械音が鳴り響き扉が軋み始めた。両

開きのそれは闇に呑まれ、それと同時に溢れ出てきた冷たい風が

肌を撫でる。

「……入るしかない様だな」

探偵はそれ以上考えること無く、足早に現場へと踏み込んだ。


────────────────


何者かが板を割る……カチカチと機械音が鳴り鉄のゲートに光が灯る。

《迫り来る恐怖》を振り切って男は必死で走った。気がつくと背

後に《恐怖》の存在は無く、男は喘ぎながら崩れるように地面に

倒れ込んだ。

次第に呼吸は落ち着き、そのまま深い眠りに落ちていった。


──────────────────


あれからどれだけ時間が経ったのだろう。腕時計は荘園に踏み込

んだ時から動いておらず、陽の光は濃霧に遮られ時間感覚は鈍っ

ていく一方だ。

「この先の部屋で最後だ……」

一階の入口付近に建物の構造図が高級感溢れる額縁に収められて

いた。

それを丸暗記し記憶を頼りに全ての部屋を潰して歩いていた。

だが、どの部屋も似たような作りで置いてあるものだけ違う程度

だった。

思ったような収穫もなく、この部屋も今までと同じようなら骨折

り損である。

僅かな期待を込めて力ずよく光沢のある木製のドアを開ける。

「これは……」

扉の先は無機質な壁に箱が置いてあるだけの部屋ではなく……生

活感のある部屋だった。

「本棚にランタン……ロウソクにピアノまで……」

コツコツと革靴の底が鳴る。

「私以外にはいな……」

いない、そう言いかけた瞬間。

背後からバサッと大量の紙が落下するような音がした。

探偵は慌てて後ろを見る──そこには思わぬ来客がいた。

「鳥……?」

割れた窓からココに迷い込んでしまったのだろうか。しかし、よ

く見ると違和感があった。

「お洒落な鳥もいたものだな」

黒い羽根が三本生えた仮面を着こなす小さな鳥──そいつはピア

ノの所まで飛んでいくとそれ以降動くことは無かった。

「少し疲れたな……休憩がてら本でも拝借して読んでみるか」

探偵は暖炉の横にある本棚から一冊の本を手に取り、革製の椅子

に腰掛けた。




その本は日記になっていた。それは、この荘園で起きた猟奇的な

事件の事についてだった。

「なんだ……これは……」

突如、奇妙な既視感に襲われ両手が震え始めた。

「…………!」

不意に視界に入った左手の傷……それを見た時、内側から黒い何

かが溢れ出て来たように感じた。

頭の中に様々な、身に覚えのない映像が次から次へと鮮明に映し

出される。

自分から逃げるように、泣きながら走る女性。大男が銃を持った

女性に何かを振りかぶる様子、こちらに向き直った女性の瞳から

光が消え涙が頬を伝うその瞬間まで。

「はぁ……はぁ……!」

頭を左右に振り思考をクリアにする。

「なんなんだ……俺は一体。あの日記……不可解な事件、非人道的だ。もしかすると、依頼主の娘は巻き込まれて……」

悪い方向にばかり考えてしまうのは探偵としてどうなのか、自分

の性分に疑問を抱きつつ椅子から立ち上がる。

「一応……建物の中だけじゃなく外も探索しておくか。手がかりが残されてるかもしれない」

探偵は逃げるように部屋から出ていった。





建物から出ると何故か来た時と景色が違っていた。

正面には見覚えのない工場のようなもの。右手側にはタイプライ

ターの様な機械、そこから黄色に発光するアンテナが生えてい

る。

「なんだ……ここは」

辺りを見回すと、今自分が出てきた建物は忽然と姿を消しそこら

中に立てかけられた板、壊れた窓枠。そして地面に設置された赤

い箱。

「なんでこんな所に工具箱が……」

興味本位で重い蓋を開け中を見ると、大量のネジや絡まった針金

で埋まっており底が見えない有様だった。

「これは酷いな……ん、なんだ?」

僅かに見えた金色の筒のようなもの、それは何かを反射し運良く

探偵の目を眩ました。絡まった針金をほどき、鉄ネジを箱の周り

にぶちまける。すると、底から銃の形をした何かが現れた。

「銃……いや、違う。 信号銃か……?  一体なんのために」

──用途は分からないが、何かに使えるかもしれない。備えあれ

ば憂いなしってやつだ。

探偵は右のポッケに無造作に銃を突っ込み、光るアンテナ目掛け

て進んだ。

タイプライターの様な機械には大量の暗号が書かれており、機械

が置かれている土台部分にはロックのかかったレバーと10桁の

ダイヤル式ロック。

少し動かした感じだけだが、恐らく機械を通すことで紙に書かれ

た文字が読める仕組みになっていて、最終的に現れる10桁の数

字を機械横のダイヤルに入力しレバーを下げることで何かが起き

るのだろう。

「最後までやってみるか……」

探偵は周りを気にすること無くカチカチとボタンを押し続けた──。


──ピー……ガシャッ。

暗号の解読終了を知らせる機械音。それと同時にアンテナに淡い

光が灯りボタンを押すことは出来なくなる。

「解読終了か……目立つな。こんな音と光が……わざとらしい。 ま

るで何かに知らせる意図が含まれてそうだ……」

一台の暗号機を解読し終え、ようやく周囲の警戒を始めた──だ

が。

──シュゥ……シュォー。

防毒マスクから漏れる息。まるでそれを連想させるかのような吐

息が聞こえる。

「なんの……音だ……?」

不気味な音、不安感に押しつぶされそうになる。次第に心拍数が

上がり呼吸が荒くなる。

「早く離れるか……」

正面にあった工場の窓枠を乗り越えてそのまま反対側へと走って

いった。


──ピー……ガシャッ。

「これで5個目……」

あと何個あるのか……いつまで続くのか。何度この不安感に襲わ

れたことか。

「また……ダメなのか」

そう、諦めかけた──その時。

戦争のサイレンのような音が自分の後方と、前方から辺り一体を

包み込むように大音量で鳴った。

「なんだ……!?」

突然の出来事で状況の理解が追いつかないまま後ろを見る。

そこには大きな鉄製の扉と暗証番号を入力する装置が壁に埋め込

まれていた。

「なんなんだ……! 何を打ち込めば……」

焦燥に駆られ、心拍数が上昇していく。

「まずいぞ……やはり、何かがいる……。さっきのサイレンでここ

に集まってくる事が想定済みなら……」

思考をフル回転させて入力装置をみつめる。

「そうか……! 分かったぞ!」

弾かれたように0から9の番号を、ある程度の予測に基づいて次々と押していく。

「くそ……最初からやり直し……焦るな。大丈夫だ……まだ間に合う」

一度でも入力を間違うと自動でリセットされてしまうようだっ

た。もう数十秒かけて、一度も間違うことなく入力を終えると鉄

の扉がゆっくりと横に開き始め、暗号解読成功を知らせてくれ

る。

「この先には何が……」

一息ついてから、ふと工場の方を見た。

──そこに居たのは不気味な形の鈍器を握りしめた大男。

「なんなんだ……あれは」

頭は僅かに傾き、全身が不自然に膨張し、身体の至る所が不自然

に痙攣している。そして着実に、確実にこちらへと近づいてきて

いる。

だが、扉はまだ大人の男性が通れるほど開いておらずただ開くの

を待つしかない。

「おいおい……急いでくれ!」

あと少し……もう数十センチ開けばなんとか通れるはず。そして

──通れる! と肩を隙間にねじ込んだ時だった。いつの間にか

眼前まで来ていた大男は鈍器を振り上げ扉から少しはみ出ている

左肩を叩きつけてきた。

「……ッ!」

とてつもない衝撃と共に激痛が全身を駆け巡る。 左肩の骨が粉

砕され、血が飛び散る。その直後、スルッと扉の奥に体が入って

いった。力を奥にかけ続けていたせいで躓き体勢を崩す。

大男はそれを見ると、武器を置いて両手で扉をこじ開け始めた。

「嘘……だろ。そんな事ありかよ……」

湿り気を帯びた草むらに尻をついて大男を見上げる。絶望と恐怖

が一気に押し寄せてくる。

そして扉がシステムの設定よりも早く、強引に開かれた。大男は

鈍器を持ち、ゆっくりと迫ってくる。

「………………」

──シュゥ……!!

大男が鈍器を振りかざした──刹那。

爆発音と同時に赤い煙が探偵の前に立ち上る。

衝撃に仰け反り悶える大男の事を見向きもせず、探偵は霧に消えた。


「はぁ……はぁ……」

途中から何があったのか、記憶が曖昧でよく覚えていない。あれ

からどれだけ走ったのか、どこに向かっているのか……左肩の熱

は今も残っている。

──頭がぼーっとする。疲れたな……ちょっと休憩でも……。

探偵は濃い霧の中で崩れるよう眠りについた。






「ここが最後の目撃情報があった場所……」

──しかし、依頼を頼んだ探偵が前金だけ持って失踪……か。娘

さんを必死で探してる人の気持ちを踏みにじって……許されな

い。

そう思う程に増していく怒りを抑えるためにカバンから《お守

り》を取り出す。亡き母親から貰ったお守りの様な物、この国に

は無い変わった形の扇子。よく見る煌びやかな物ではなくて……

落ち着いた、無駄の無い美しい扇子。


あたしが絶対に見つけて連れていきますから──。

強い決意を胸に、その女探偵は荘園に足を踏み入れた。
返信

道具を使う 通報

あなたはログイン後にコメントしてもいいです ログイン | 新規登録

ポイントについて