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愛しい橙色

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怪談の宴
ゲーム内の名前: rotroh
ゲーム内のID: 983910
サーバー: アジア
荘園内にある中庭はエマのお気に入りの場所であった。
大小様々な草花や綺麗に刈り揃えられた植木、おまけに小さな噴水まであり、庭師であるエマにとっては自身に与えられた部屋よりも心安らぐ居場所となっていた。

それが今日はどうしたことか、扉を開けた先に広がる景色はいつもの見慣れた植物達ではなく、辺り一面が長く伸び渡った蔓の緑とごろりと転がった無数の果実達のオレンジに埋め尽くされていた。
「・・・カボチャが沢山なのー」
人の頭ほどの大きさに育ったカボチャがずらりと並ぶ光景を前に思わず感嘆の溜め息が漏れる。
色形から見るに、主に観賞用として人気がある種類のカボチャだったと記憶している。
だが、こんなに大量のカボチャが育っていたならば毎日この場に訪れていた自分が気付かないはずがない。
カボチャは昨日まで確かに存在していなかった。

しかしこの荘園自体が奇妙で謎だらけの存在であることは既に身に染みて分かっている。
まるでそこが最初からカボチャ畑であったかのような中庭の有様に初めは戸惑ったものの、日付的にとあるイベントが近いこともあって、彼女はこの不可思議な現象を至って前向きに捉えることにした。
「これだけあれば皆の分のジャック・オー・ランタンが作れるの!」

その《庭師》の名前の通り庭仕事が得意な彼女は、ランタンに加工するのに丁度良さそうなサイズのカボチャを見繕いてきぱきと人数分の収穫作業を済ますと鮮やかに色付いた橙色の表面をご機嫌な様子で磨いていく。
「エミリーさんのは一番優しそうなお顔にするの!ライリーさんのは眼鏡のお顔で、ピアソンさんのはお髭なの!」
あぁでもセルヴェさんとカートさんもお髭が生えてるななどと考えながらハロウィン当日に飾るジャック・オー・ランタンのデザインを考えるエマは実に楽しげで、日頃恐ろしいゲームに怯える彼女の姿はどこにも無く、ただの年相応の純真で無邪気な少女がそこにいた。
今年はとっても楽しいハロウィンになりそうなの!とエマは一人カボチャを前に
にこやかな表情を浮かべ数日後に控えたイベントに思いを馳せる。

・・・そういえばこんなにわくわくするハロウィンはいつ以来だろうか?
思考を巡らせつつふと視線を下に落とすと、茎から切り離されたカボチャ達が頂点をいくらか過ぎた太陽に照らされ、明るい秋の色を返してくる。
中庭に流れる穏やかな時間がエマの脳裏に遠い日に置き去りにされた十月の情景を浮かびあがらせていた。


荘園に訪れたハロウィンの夜。
広間に飾られた自分達を模したカボチャ達に沸くサバイバーの前に製作者が得意げに飛び出していく。
一体どこで仕入れてきただのいつの間に作っていただのといった質問攻めに、さながら魅惑的な秘密を手に入れた子供のようにきらきらとした笑顔を浮かべた少女は、くるくると踊るような足取りで彼らの前に立ち、ハロウィンのお決まりのフレーズを唱えた。
「その前に皆・・・トリック・オア・トリート!なの!」

その頃、長い廊下を経て扉一枚隔てた中庭では、唯一の常連が不在である代わりにぼうっと輝くジャック・オー・ランタン達で賑わっていた。
にんまりと笑う戯けた顔のランタンや髑髏を思わせるような不気味な顔のランタンなど、広間のものとは趣向を変えた作りの物が目立つ。
その中で他より一回り大きなカボチャで作られ、ベンチに鎮座するランタンが一つ。
豪快で、どこか温かみが感じられる笑みをたたえたランタンが何処からか吹いてくる秋の夜風で明かりをちらちらと揺らしながら辺りを橙色に照らしていた。

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