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湖の底から

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投稿時間: 2018-10-21 18:41:51 携帯電話から | 投稿者のコメントのみ表示 コメントボーナス |逆順にブラウズ |閲読モード
怪談の宴
ゲーム内の名前: 打首獄門鬱患者
ゲーム内のID: 3123775
サーバー: アジア
水底は、ひどく冷たいものだった。緑色に濁った水を透かして中天に輝く白い光が月なのか太陽なのかさえもわからなかった。
沈んだ己の体を忌み嫌うように避けて通る小魚たちは、己の複数ある瞳を合わせるとたちまちの間に白い腹を見せて死んでしまった。

己と目を合わせてしまった狂気に耐えられなかったのだろう。
なんて脆弱で、不完全な生き物なのだろうか。
この星の生物はみな、己よりも弱いモノばかりだ。

しかし、だからこそ慈しみ愛する価値があるのかもしれない、と己は思った。

そうして思考を巡らせていれば、今日もあの少女がやってくる。

この湖の底に沈む己に会いに来る。

❇︎❇︎❇︎
湖のほとりで複数の人形でごっこ遊びをしている少女は、湖から現れた己の姿に驚くこともせずに顔を輝かせる。

「あ、こんにちは!黄色いおじさん」
黄色いおじさんというのは、己の纏っているこの黄衣からとったらしい。

名乗る名もない、呼びかたなど記号になど過ぎないのだからと好きに呼ばせている。
その証拠に、己もこの少女のことを〝娘〟と呼んでいる。

「・・何をしているんだ」
「お人形ごっこ、手と足のパーツを付け替えておしゃれな女の子を作るのよ。」
少女は鼻歌を歌いながら木製の人形の手足をもいで、爪紅の塗られた手足を付け替える。
おしゃれ、という美意識に関しては己は良くわからないが、少女にとってはそれがおしゃれというものなのだろう。
「よーし、終わったわ!綺麗な手足になったわね、アンヌ。」
くるり、とこちらを振り向いた顔はいつも通りの期待に満ちた顔で、己は少しばかり安堵した。

「それじゃ、おじさん。今日はどんなお話を教えてくれるの?また九尾の狐のお話でもいいわよ。」
「またその話か、娘よおまえはその話が随分と気に入っているようだな。」
「もちろんよ!だって最高に神秘的じゃない、妖怪なんて。身近な存在でいるはずがないのに歴史の本には載っているんだもん。」
少女は笑うとアンヌを抱き上げて何が楽しいのかぐるんぐるんと回り始めた。

「ならば、今日は九尾の狐のその後の話を語ってしんぜようか。遥か東方の島国に逃げおおせた妲己の物語を・・・」
語り出せば少女は私の目を視て笑った。
異形のナリを直視しても死ななかった人間は数多くいたが、こんなにも瞳を輝かせて己の目を視るのはこの物好きな少女のみだったと記憶している。

赤く焼けた空に急かされるように少女は、アンヌを抱いて帰路につく。己の姿が見えなくなるまで手を振っている少女を見届けると、己も水底へと沈んだ。

❇︎❇︎❇︎


万聖節の前夜のことであった。
水面のさざめきに混じり、ヒトではない者達の声が聞こえた。

『期は今ぞ』  
『 期は今ぞ』              『万聖節   が来る前に、生きる者の 魂を奪え』
                                                                                                                                             『子供の、女の 、男の、赤子 の、胎児さえも喰い殺せ。』
『墓場の死体に入りこみ、家族もろとも喰いつくせ』
                                                                                                                             『一年に一度のこの好機、飢えに飢えたこの身を血で贖ってもらおうか』
おぞましいほどに近くなった金色の月の下に、己は姿を現わす。
地を這いずるヒトではない存在は、腹が膨れ、手足は糸のように細い。それに関わらず目は爛々と血生臭い輝きがありヒトではないことは明確であった。

「餓鬼、ここは我の箱庭だ。疾く立ち去れ。」

『な、お前は!』    『黄衣の王!!』
やいのやいのと騒がしい魔のもの達は己の姿を視ると敵意のこもった瞳でこちらを睨みつける。
『別に、あんたに迷惑をかけるわけじゃない。少しだけ騒がしくなるだけさ。人間達の怨嗟でな。』

中でもいくらか力のある魔のものが進みで、狡猾な口調で軽口を叩く。
『そうそう、目的はアンタじゃない。あくまで俺たちが餌にしているのは人間だ。
手を貸せと言ってるんじゃない、ただ見てるだけでいい。近くの村には活きのいい人間どもが多くいる。なんだったらいい感じの子娘一人分けてやっても・・・』

「よく回る舌だ」

己は魔のものを触手で締め上げていた。

ペラペラと回る舌を指で引きちぎると、湖のほとりに生えた細い木立に舌をつけた。
まるで木立に口ができたようで少しばかり愉快である。
「お主にはこの木のように静かな方が丁度良かろう。」

『ーーーーーーー!!』                     『てめぇーーーーーっ!!!』

痛みに声のない悲鳴を上げながら暴れまわる魔のものに呼応するように、餓鬼達が飛びかかってくる。

すかさず己は赤い眼を合わせる。

「名も無き魔のもの共よ、我の目を視て正気でいられるか。 」
半数以上の餓鬼は動きを止め、残りの餓鬼は各々発狂するもの、泣き出すもの、腰を抜かすものと、瞳に籠る敵意が畏れとなる。

「畏れよ、我は狂気を代弁するもの。叫べよ、我は恐怖を運ぶもの。
                                                                                        我  は黄衣  の王。汝らに 死をもたらすもの。」

















湖のほとりが血の朱に染まる頃、風の音と共に一人の青年が現れた。


傘をさした色の白い青年は傘の中から逃れた魂を餓鬼の腹から回収すると、「面倒をかけました、申し訳ない。」と深々と頭を下げた。

「今日は一人なのか」
と問うと、穏やかな笑みを浮かべて
「いいえ、いつも二人ですよ」

と言った。
青年の片目は平素違う王蜜色になっていた。





この一件以来、湖近くの村人からは(元から歓迎などされていなかったが)深い畏れを抱かれるようになった。
そして、やがてあの少女を見かけることも無くなった。


湖の底に体を横たえた我の手元にあるのはアンヌを模して作った一つの木の人形だ。
あの少女に渡そうと思い作ったものだが・・・


もう使うこともなかろう。




水中で手を離すと人形は月の光に向かって己の手を離れていく。
その人形が遠く小さな点になるまで、黄衣の王・ハスターはその様子を眺めていた。





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