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収穫祭の訪問者

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新手上路

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に発表する 2018-10-14 19:01:34 携帯電話から | すべてのコメントを表示 |閲読モード
怪談の宴
ゲーム内の名前: 元失踪者
ゲーム内のID: 10543085
サーバー: アジア
「やぁナワーブお早う!今日は何の日か知ってるかい?」
「…急に何だよ」
同室のカートのやや興奮ぎみな声に渋々目を覚ます。カートもナワーブもサバイバー達の中では相当早起きな部類だが、常はナワーブが先に起きて、その物音にカートが目を覚ますことが多い。が、今日はどうやら逆らしい。
「ほら見てごらんよ今日の日付!」
目の前にずいっと突き出されたのはカレンダー。カートの指で示されていたのは10月31日。暫し考えてその日がどういう日であるかを思い出したナワーブははぁ、とため息混じりにカートを押しのけて立ち上がった。
「ハロウィンだろ?」
「そうそう!今日は朝から皆ジャック・オ・ランタンやお菓子、料理、仮装の準備で大忙しになるよ!」
押しのけられても全く堪えた様子もなく、まるで少年のようにはしゃぐカートを横目に普段通りの服を身に付ける。
「カートも着替えて来いよ。それ、パジャマのままだぞ」
あ、と指摘されて初めて自分の姿に気付いたカートに苦笑いしてナワーブは部屋を後にした。
別に自分には関係のない話だ。もう子どもでもあるまいし、それに──カートの様にはしゃげるだけの素直な心など、もう既に何処かへと消えてしまった。浮かれた空気はどうも苦手だから、人が少なそうな今のうちに食事を摂って、適当なハンターでも誘って実戦訓練でもしてやり過ごすか、と考えながらリビングの扉をくぐる。
「あら、ナワーブさん。お早いんですね」
そこに声を掛けてきたのは盲目の女性、ヘレナである。
「ヘレナも今日は起きるのが早いんだな。普段マーサに起こされていなかったか?」
ナワーブはキッチンに置いてあったパンをいくつか適当に見繕って、ヘレナの正面の席に座って食べながらそう問いかけた。
「ええ、お恥ずかしながら…。今日はほら、ハロウィンじゃないですか?少しわくわくしてしまって。ふふ、もう子どもじゃないんですけどね」
ヘレナはかなり少食だ。パン1つを細かくちぎりながらゆっくり食べていく。一方ナワーブは既に2個目のパンに手をつけていた。
「ハロウィンか…」
「あら、あまり楽しく無さそうですね」
「まあな」
「面白そうですよね、カボチャのランタンやきらびやかな仮装。目が見えないのが残念ですよ。ナワーブさんはやらないんですか?」
「やらない」
「あら…残念です」
ご馳走さま、とパンを食べきったナワーブにヘレナがびっくりしたような表情をする。彼女のパンはまだ3分の1程が残っていた。
「相変わらず食べるのが早いんですね。ゆっくり噛んでますか?」
「…君もエミリーみたいなことを言うようになったな」
「エミリーさん、良く言ってますよね」
くすくすと笑ったヘレナに早く食べろとやや不機嫌に言い残すとリビングを後にした。
さて、誰に相手して貰おうか。足の早いジャックを相手に撒く練習も良いし、最近来た范無咎、謝必安でもいいし。ヴィオレッタは──多分そう長い間練習に付き合うような性格ではないだろう。
「っと…」
「あ、済まない……って、レオ?」
考え事をしている間にレオにぶつかってしまったようだ。しかしハンターの居住する場所とサバイバーの居住する場所は違うのに何故?と疑問に思っていると、ナワーブの困惑を察したのかレオが言った。
「知らないのか?荘園の主の意向だかなんだか知らないが、今日はハンターもサバイバーも交流出来ることになっているらしい」
手元に大きなカボチャをいくつか持っているのを見てナワーブはレオが何が目的でここに居るのかを察した。
「…そうか。ああ、そうだ。范無咎、謝必安は今手空きか?」
「?ああ、そうだがそれが?」
「今何処に居るか分かるか?」
「今は建物の外を散歩しているんじゃないか。あいつらは食事摂るのが早いからな」
「そうか、ありがとう」


急な誘いであったにも関わらず、謝必安(ナワーブが会ったときはそちらの姿だった)は「私も少し騒がしいのは苦手ですので」と快く引き受けてくれた。軍需工場で暫く追いかけられて捕まったり、撒いたりを繰り返している内に昼となった。
「そろそろお昼時ですね。一度戻りますか?かなり長い間追いかけたり追いかけられたりしましたし、少し休憩を入れた方が良いでしょう」
謝必安は涼しい顔をして懐から懐中時計を取りだしナワーブに問いかける。一方のナワーブはいくら傭兵の体力があったと言えどすっかり汗だくで息を切らしていた。ハンターの体力が羨ましい、とナワーブは心の中で溢す。
「いや、もう少し……いっ!?」
続けたい、と言いかけた所で足首に一瞬鋭い痛みが走る。さっと足を振ってすぐに踏みつけると、巡視者がナワーブの足の下でじたばたと暴れていた。
怪訝そうな顔で謝必安を見上げると謝必安も巡視者を見て首を傾げた。
「…私、今日はこの子は連れてきてないんですけどね」
「だよな?」
ナワーブが訓練中見かけたのは巡視者ではなく監視者である。つまり、この巡視者は他のハンターのものであるということになる。
少し見せてください、とナワーブの足の下から巡視者をつまみ上げると、相手が主と同じハンターだからか幾分大人しくなった巡視者を謝必安は暫く観察していた。
「あ、何か結わえ付けられていますね」
それは細長い手紙だった。
「ナワーブさんは読めます?」
「……いや、さっぱり」
「ですよね。文体は日本語の様なのですが……日本語?」
そこで何かに気付いたように二人は目を合わせた。
「美智子さんの……ってことですかね」
「恐らくは?」
「…彼女の字は見たことがありますが、もっと流れるように美しかった筈です。こんな乱雑な字…見たことありません。嫌な予感がします、急いで戻りましょう」


戻った先で2人を待ち受けていたのはもぬけの殻となった建物であった。
「…どういう、ことだ」
「分かりません……どうして」
ナワーブが朝、食事をしたリビングで茫然と立ち竦む2人。目の前にはヘレナが普段使用する杖やくりぬきかけのカボチャ、「エミリー・ダイアー」と刺繍が施された、細かいカボチャのくずを拭き取った跡があるハンカチ等、つい先程までハロウィンの準備に勤しんでいた形跡が残されていた。しかし、誰も居ないのである。それどころか、建物全体から人の気配がしない。
「皆さんは…一体何処へ…?これは、かくれんぼにしてもあまりにも気配が無さすぎます」
魂を操れる謝必安。人の気配に敏感なナワーブ。その二人ともが、誰の気配も感じ取れないなどあり得ないことだった。
一応探してきます、と謝必安がリビングを抜けたのを見送ってナワーブは何か置き書きでも残されていないかとリビングを慎重に見て回った。
良く見れば、椅子にはピアソンやジャックの上着がかかっているし、とあるカボチャにはエマ、と彫られていたりしていた。きっとここでサバイバーもハンターも関係なく皆で騒ぎながらハロウィンの準備をしていたのだろう。そう思うと、誰も居ないリビングが急に不気味なものに感じてナワーブは知らず知らず腕をさすっていた。
「ナワーブさん」
声を掛けられて振り向くと、少し落胆した顔の謝必安がそこにいた。
「やはり居ませんでした」
「そうか…こっちも、特に出かけるとかいうメモ書きはなかった。それらしい話も出ていなかったし……」

───クスクス。

「ん?今誰かの笑い声が…」

───クスクスクス。

「…誰か居るのか」
ナワーブは腰に下げたナイフに手を伸ばした。勿論、出てきた者がサバイバーや見知ったハンターなら手を下ろすつもりで。

──アハハハハ♪

「っ!?」
笑い声がすぐ耳元で聞こえ、ナワーブは咄嗟にナイフを抜いてそのまま後ろに振り抜いた。しかし、ナイフは空を切った。それどころか……
「謝必安!何処行った!」
つい先程までそこにいたはずの謝必安が居ない。それも、彼が常に大事そうに持ち歩いている傘ごと。
「ち……」
舌打ちすると、唐突に猛烈な眠気がナワーブを襲った。
何だこれ、と思う間もなくナワーブの体は床に倒れ込む。


「やあナワーブお早う!今日は何の日か知ってるかい?」
「……?」
「あれ?珍しく寝起き悪いね」
聞き慣れた言葉を聞いてナワーブの意識は覚醒する。そこには、やや興奮ぎみなカートの姿があった。
「……今、何を……?」
「あれぇ、本当に珍しいね。ナワーブの寝ぼけた姿なんて初めて見たかも……ってそんなことじゃなくて!ほら、今日はハロウィン!」
ああ、とカートのテンションが高い理由に納得し、ため息をついてカートを押しのけ立ち上がり、まるで少年のようにはしゃぐカートを横目に普段通りの服を身に付ける。
「カートも着替えて来いよ。それ、パジャマのままだぞ」
あ、とナワーブに指摘されて初めて気付いたカートに苦笑いし、ナワーブは部屋を後にしようとした。

───クスクス。

───クスクスクス。

───コレデ、ミンナイッショ。

───ミンナデ、アソボ?

「ん?何か言ったか、カート」
「え?いや、何も?」
「…?聞き違いか。悪い」




年に一度の収穫祭には、死者が生者の元を訪れる。
その中には、人間に害をなす魔女や悪霊もいるという。
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