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怪談の宴
ゲーム内の名前: |
kakera |
ゲーム内のID: |
1116287 |
サーバー: |
アジア |
悲鳴が聞こえる。
道化の彼が仕留めたのだろう。荘園に飛ばされた者の悲痛な叫びだ。
その声を聞き流しながら、私も担いでいた男を椅子に縛り付ける。
彼もまた悲鳴を上げながら彼方に消えた。
最初は8人いた脱出を目論む輩もこれであと1人だ。
最後の1人を探すため、当たりを見渡すと錆び付いたメリーゴーランドが目に止まる。
昔は娘とあれに乗ったものだが、と懐かしさが心に沁みる。その心も今となっては錆び付いてしまった訳だが。
思案に耽っていると壁の向こうからカチャカチャ…と音がした。聞き覚えがある。彼女のお気に入りの工具箱が揺れる音。
覗き込む。
見つけて…しまった。
黄色い帽子を被った彼女と目が合う。
ああ…そんな怯えた顔をしないでおくれ。
小さい頃の思い出が走馬灯のように頭をよぎる。
なんならこのまま見逃してしまおうか。1人くらい逃がしたって問題ない。
そんな考えを遮るように後ろから金属音が近づいてくる。
義足のピエロ。あぁ…わかってるよ。脱出を阻止するのが僕らの仕事だ。
覚悟を決める。
足が竦んで動けないのか、逃げる素振りのない彼女を殴りつける。
彼女を抱えると昔の記憶が否が応でも蘇る。
メリーゴーランドに乗ったこと、サーカスのピエロを見て泣いてしまったこと、僕が苦手なジェットコースターに乗りたいと何度もせがまれたこと。
あの火事で涙腺が死んでしまったことを初めてよかったと思った。もし涙腺が生きていたら涙を止められそうにない。
そうこうしているうちに椅子の目の前だ。彼女を絶望に陥れる椅子。
願わくば、僕が見ていないときに逃げ出してくれ。そう思うのも職務放棄だろうか。
椅子に縛った彼女の唇が動いたが、なんと言っているのかはわからなかった。
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